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第1回 法定労働時間と所定労働時間 〜残業代の支払〜
以下の事例をどの様に考えますか。 9時始業17時分終業、休憩1時間の会社に勤めるAさんは、昨日同僚とついつい飲みすぎてしまい、今朝はなかなか起きられずに1時間遅刻してしまいました。この日仕事が終わったのは18時30分。“1時間遅刻しちゃったけれど1時間以上残業したから、これでチャラになったよね。残業までして俺って偉いね〜。残業代も付くことだし、今日もパーッと行きましょうか〜!!”と、Aさんは意気揚々と飲みに行きました。
さてこの場合、Aさんへの残業代はどの部分に対して支払わなければならないのでしょうか。遅刻した1時間分と残業した1時間分は基本的には相殺することが可能です。(就業規則で17時以降の就業に対して時間外の割増賃金を支払う等と規定している場合は出来ません。その場合、遅刻の賃金は就業規則の定めにより差し引き、17時以降の就業に対して割増賃金を支払うことになります)就業規則で相殺が可能だったとして、残り30分の残業はどうなるでしょうか。まずは法定労働時間と所定労働時間について確認してみます。
Aさんの会社は1日の所定労働時間が7時間となっています。一方、労働基準法で定められている法定労働時間は1日8時間、1週間原則40時間です。労働基準法では割増賃金の支払は法定労働時間を越えて労働した時間に対し2割5分以上5割以下の割増賃金を支払うとなっていますので、8時間を越えなければ割増賃金を支払う必要は無い事になります。しかしこの場合も就業規則でどの様に定められているかが問題となります。
果たして皆さんの会社はどちらでしょうか?1の場合は8時間を超えなければ割増賃金の支払は発生しません。もちろん所定労働時間は7時間ですので、30分の労働時間に対しては通常の賃金は支払わなければなりません。2の場合は所定労働時間(この場合は7時間)を超えた場合割増賃金を支払うといっていますので、今回の30分に対しては割増賃金を支払う事になります。
Aさんが遅刻をしなかった日に18時30分まで残業した場合はどうなるでしょうか。上記1の場合ですと8時間を超えた30分に対して割増賃金を払えばいいことになります。2の場合は1時間30分に対して割増賃金を支払う事になります。
“なんだ、労働基準法で払わなくっていいとなっているなら、今まで7時間越えたら払っていたけれど、これからは8時間越えたらにしよう”と思った方がいらっしゃったら、ちょっと待ってください。労働基準法には「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。(労働基準法1条2項)」とあります。従って、労働基準法に書いてあるから、変えるよ。というのは通じません。
さて、飲みに行ったAさん、一緒に行ったBさんに残業代の事を話したら、“遅刻の分と相殺されるし、法定労働時間越えないとうちの会社は時間外の割増賃金は付かないよ”と言われて少々気落ちしています。就業規則の内容を知らなかった様ですね。法定労働時間の事もBさんから聞いたようです。そこでAさん、居酒屋の主人にこんな事を言っています。“法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間だよ、ちゃんと残業代払ってる?”(これって、絡んでいるのでしょうか?)対してご主人の答えは“いやー、うちはちっちゃい飲み屋ですからね。従業員も3人だし、44時間までかまわないらしいですよ。”Aさん“そんなことあるの???”はい。そんなことはあるのです。
週の法定労働時間は原則40時間ですが、常時10人未満の労働者(パート・アルバイトを含む)を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業の事業については、1週間の法定労働時間を44時間とする特例が適用されています。1日8時間の特例はありません。ちなみにこの居酒屋さんの所定労働時間は、1日7時間の週6日勤務で、週42時間だそうです。
“ふーん、いろいろあるね〜。遅刻したお陰で勉強になったよ”Aさん、それはちょっと違うでしょ・・・。明日は遅刻しないで下さいね。 |